手に入れる女
しばらく二人は無口で歩いていた。
しかし、どこからとも流れてくるクリスマスソングを耳にしながら、キラキラと光る街中を歩いていると、自然と気持ちが浮き立って来る。
佐藤の気分は上々だ。
落ち着いた佇まいのしっとりとした小料理屋につくと優香は嬉しそうに頬を染めた。
初めてボーイフレンドとアイスクリームでも食べにいったかのような初々しい表情。
ーーあなたはこんな顔もするんですね……
優香を抱きしめてしまいそうになり、佐藤ははっと身を引いた。
おかしい。
自分の中にある何か得体の知れないものが佐藤に危うい道を進ませようとしているかのようだ。
自分自身を乗っ取られまいと抵抗するかのようにふるふると頭を振りながら佐藤は席に着いた。
優香は頬を上気させ熱心にメニューを見ている。
ドリンクメニューを見ながら優香が言った。
「乾杯しませんか?」
「しない方がいいんじゃないでしょうか。乾杯するようなこともないですし」
なるべくそっけなく聞こえるように言ったつもりだった。
今日こそはこれ以上優香のペースに巻き込まれないようにしよう、と用心しているのだ。
優香は、佐藤の言葉をサラッとスルーし、あっさりと言った。
「じゃ、私だけ頼みますね」
「是非そうして下さい」
佐藤はウーロン茶を頼み、優香は一人でさっさと生ビールを頼む。
こういう時にひるまず堂々とビールを注文するところが優香らしい。
全く他の人の目を気にする事なく自分のしたいようにする優香が羨ましかった。