手に入れる女

「小泉さんはあまり他人の視線を気にしませんね」
「何ですか、急に?」

優香は、その時テーブルに届いたビールを躊躇することなくググッと飲みほしている。
つられて佐藤も頼みそうになるほど、美味しそうに飲んでいる。

佐藤はその様子を見ながら話を続けた。

「ほら、そういうところが。小泉さんのその自由な振る舞いを見てるとこっちまで嬉しくなります」

優香は意外な顔をして、

「佐藤さんもあんまり外聞を気にする感じはしませんけどね」

そう言いながらも手を休めることなく次々と飲み食いしていく。
優香は意外な程健啖家であった。

佐藤は感心しながら

「小泉さんは顔に似合わずよく食べますね」

というと、言われ慣れてるのか、優香はアハハと笑って

「食べるのも早いし、男の人には幻滅されますよー」

と屈託なく返事をする。

「男の前で気をつけたりしないの? それとも僕の前では気にしないってことかな」
「いいんです。そういう気遣いは。気にする人とはどっちみち付き合ってもうまくいかないから、時間の無駄。
 佐藤さんはどっちなんです、大食いの女と可愛らしく食べる女、どっちが好みなんです?」
 
「妻はどちらかというとゆっくり食べますけどね」

ーーさすがに凹むかな。
ちくりと刺すように、美智子のことを話題に載せた。
佐藤の精一杯の牽制である。

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