手に入れる女
が、しかし、優香は大して気にする風もなく、さらりと話を継ぐ。
「あたしは佐藤さんの好みを聞いたんだけどな。奥様が理想の人ってわけですか」
「まあ、そういうことですね」
佐藤もさらりと答えた。
優香を相手にのろけるような話をするとは、奇妙な成り行きである。
優香のこういう図太さが面白い。相当強気でなければできないことであろう、と佐藤は思う。
手を止めずに次々と食べて行く優香をみながらぼんやりしていると、優香がぼそっと呟いた。
「実は断られるかな、と思ってました、食事」
「実は断りたいな、と思ってました。面倒なことになりそうなのが容易に想像できるので」
「じゃ、何で断らなかったんです?」
「私は『交渉のプロ』ではないので、粘っても負けるかなと思ったんです。実際あなたのしつこさにはしゃっぽをぬぎますよ。
次々に屁理屈を捲し立てて」
「戦う前に、白旗をあげちゃダメですよ。交渉の極意は粘りですから」
「確かに」
佐藤は、口をとがらせて助言をしてくる優香を見て、声を立てて笑い出した。
さっと空気が和んだ。
「どうやって『交渉のプロ』になったんですか?」
聞かれるがままに優香は自分の経歴を披露した。