手に入れる女
優香は、急にふっと真顔になって佐藤に迫ってきた。
「奥様ってどういう方なんですか」
なんだか今夜はいつもと調子が違う。
酒が入っているからだろうか。夜、会っているからだろうか。
いつもより一層親密な空気が二人の間に流れて、優香は大胆になっているのかもしれなかった。
佐藤は警戒しながら優香に答える。
「また、唐突に聞いてきますね」
「佐藤さんの奥様ですもの、興味ありますよ」
「相変わらずストレートですね」
「そうですよ。まずは、敵のことを知らなきゃね」
冗談めかして言うが顔は真剣だ。佐藤はうっかり口が滑った。
「敵……って、露骨だなー。やっぱり口説かれてますよね、私」
優香は呆れた顔をして佐藤を見返した。
「そうです、バリバリ口説いてますよ。全然落ちませんけどね」
平然と言い放つ優香に、佐藤はぎょっとする。動じてないふりをするのが精一杯だ。
「一応、既婚者なので、そう簡単には」
それから佐藤はウーロン茶をがぶがぶと飲んだ。
この子とは絶対酒は飲めないな……。
そんなことをぼんやり思いながらコップを空にした。