手に入れる女
「……これでも、一応、君に気を使ってるつもりなんだけど、わかってるのかな? ……君は本当に身もふたもないんだなァ……」
「あ、そうかな、ごめん。でも……ホントに連絡しないの? 奥さんに疑われちゃうんじゃない?」
「かもね」
「……やっぱり余裕だなあー……」
優香は小さくため息をついた。
ばれないと想ってるのか、ばれても佐藤の奥さんは許すだろうと思っているのか、優香には佐藤が何を考えているかわからない。
不安そうな顔をした優香を優しく抱き寄せて言った。
「余裕なんて全然ないよ。ただ……取り繕ったところで、なるようにしかならないんだろう、と思ってるだけさ。……抵抗したって無駄な気がするんだよ」
当たり前のことを言っているのだ、というような淡々とした言い方だった。
「後悔してる?」
「そりゃあ、いずれはするでしょう」
「何、その言い方……」
「だってどう転んだっていい結果はあり得ないわけだから」
佐藤は、まるでいち足すいちの答えを言う時のような、何の躊躇も迷いもない返事をする。
どこか他人事のような突き放した口ぶりがかえって優香をうろたえさせた。
「そっちこそ身もふたもないじゃない……」
「そうかもね。だから一線は越えたくなかったんだけどね……何でこうなったんだか……。案外、人間の理性ってもろいもんだな」
のん気な人ごとのような返事しかしない佐藤がますます憎らしくなってくる。
「何、哲学してんのよ。ね、今まで浮気したことある?」
「いつものことながら、唐突だねぇ」
佐藤はちょっと苦笑する。それから、優香から顔をそらしてふいに天井に顔を向けた。
優香は起き上がって佐藤の顔を覗き込む。
逃がすつもりはなかった。
「だって、絶対モテるだろうし、なんか今も余裕があるし。分別くさい言い方で『人間の理性はもろいよね』なんて言われたらさ、場慣れしてるなーって思うじゃないの」
「余裕なんかないってさっきから言ってるでしょ。浮気したこともありません」