手に入れる女
「ぜったいウソだね。女に言いよられた事なんて何度もあるでしょう~?」
佐藤は優香のいいがかりのような文句にも感情的になることはなく、抑揚のない平坦な答え方だった。
「ないとは言わないけど、君みたいに気が強くて強引な子はいなかったからね」
「あー、今までは理性で断ってたんだー。なるほどねー。そう言われれば『らしい』ねー」
佐藤の返事は、優香には納得のいくものだったらしい。
「じゃあ、理性が吹っ飛ぶほど私に夢中ってこと?」
それを聞いて佐藤はくすくす笑った。
「やっぱり、気持ちがいいほどの自信家だね、君は。それに負けん気も強い。
もしオレが、『ただの遊びだよ』って答えたら、どうすんのさ」
完全におちょくられている。優香はムッとした。
「後腐れないように、割り切った関係でいましょ、って言うわよ」
「そんなことできやしないのに?」
答えに詰まった優香に、佐藤は続けてぼそりと呟いた。
「割り切れる程度の関係でいられるなら、一線を超えたりするかよ」
「……私のこと、どう想ってるの?」
相変わらずの直球だった。
佐藤はしばらく考える。
「……わからない」
「そんな風に、今までも、自分の気持ちをごまかしてきたんじゃないの?」
ちょっとばかにした口調の優香に佐藤は言い訳をした。
「オレは不幸な人生はイヤなんだよ。浮気とか不倫って不幸な人生を呼ぶじゃない。好きになったからって、一々浮気をしてたら、周りの人を傷つけるだけだろう?」
「そんなの……ただの事なかれ主義じゃない。本当に好きになったらそんなこと省みる余裕なんてないんじゃない。あたしは、自分に嘘をついて幸せになるより、自分に正直で不幸な方がずっといいと思う」
「名言だね、それ。でも、オレは不幸なのはイヤ。誰かを不幸にするのもイヤ」
この話はそれでおしまいにしたかったのか、佐藤は、優香の髪を指でそっと梳きながら、キスをしてきた。
優香はさらに意地悪く食い下がる。
「すでに奥さんを不幸にしてる」
「……わかってる」
それだけ言うと、佐藤は今度は優香の胸に顔をうずめた。佐藤には、もう、優香が何を言っても返事をするつもりはない。