手に入れる女
初めての場所で初めての朝を迎えたとは到底思えない、なめらかな一連の流れをどう解釈してよいか、優香は全く狼狽していた。
佐藤を見送った後、優香も慌てて出勤の支度を始めた。もしかして、そのまま出て行ったのかも、なんてちょっと疑っていた矢先、ただいま、とのん気に言いながら、佐藤が戻って来た。
あまりにも自然に出て来たので、意識していたのか無意識だったのかは優香には判断がつかなかったが、その「ただいま」は優香をひどく感激させた。
帰ってくると、そそくさと別の部屋に勝手に入って行き、すぐに着替えの入っているあろうドンキの袋を手にして出て来た。
「悪いけど、紙袋かなんか貰えない? これじゃ、さすがに恥ずかしい。」
あまりのマイペースさに驚きつつも、優香は言われるがままに紙袋を渡した。
佐藤は紙袋を受け取ると、中にドンキの袋をがさっと入れた。
「支度できた?」
佐藤が聞くので、優香がうんと答えると、
「じゃ、行こうか?」
と優香を促した。
さすがに優香はこれには驚いた。佐藤が何を考えているか、優香には全くわからなかった。
「え、一緒に行くの?」
「だって、同じ方向じゃない」
優香の驚きが佐藤には理解できないようで、優香はさらに混乱した。
「そうだけど……誰かに見られたら困るんじゃない?」
「困るの?」
「いや、あたしはいいけど……」
「じゃ、早く行こう」
言いながら、佐藤は、ドアを開けて優香が出てくるのを玄関で待っている。
優香が鍵をかけるのを待って、二人は並んで歩き出した。
佐藤は人目を気にする事もなく、初めてなのに、まるでもうずっと一緒に暮らしているみたいな錯覚に優香が陥るほど、佐藤の動作にはぎこちなさもためらいもなかった。
試しに、優香が佐藤の腕を組んでみると、佐藤は別に嫌がる事もなくされるがままにしている。
優香は駅が近い自分のマンションを初めて呪った。