手に入れる女
地下鉄の駅を降りて、会社に向って二人が並んで歩いていると、沢田が後ろから声をかけて来た。
「部長ー、おはようございます。早いですねー」
「ああ、沢田君、おはよう」
佐藤も愛想よく沢田に挨拶を返した。
沢田はすぐに隣りにいる優香に気づいて、何か言いたそうに優香の方をチラチラと見ていた。明らかに好奇心をむき出しにしている沢田の様子に気づくと、佐藤は沢田に優香を紹介した。
「沢田君、こちら小泉優香さん。職場が近いんだ」
「小泉さん、こちら、同じ部の沢田」
佐藤に紹介されて優香も慌てて挨拶をした。
「初めまして……」
「こちらこそ……」
挨拶はしたものの、沢田は明らかに、佐藤と優香の関係を知りたそうにしているので優香は非常に居心地が悪かった。
佐藤はそんな沢田の気配に気付いていないはずはないのに、まるで気にしてい様子で、あっさりと優香との出会いを沢田に説明した。
「小泉さんがケータイを落として、オレがそれを拾ったの、あそこのコーヒーショップで」
佐藤は、行きつけのコーヒーショップを指差す。
「ケータイ返したあとも、店でちょくちょく会うんだよ。で、何回か会ってるうちに顔見知りになっちゃったんだよね?」
最後は確認するように優香の方を振り向いたので、優香もつられてうなづいた。
「へー、そんな出会いもあるんですねー」
沢田は、佐藤の説明を最後まで聞き終わると、それ以上は気まずい雰囲気を醸し出す事もなく明るく相づちを打ったので、優香はひとまずほっとした。