手に入れる女
「佐藤さんって会社ではどんな感じなんですか?」
「部長? いい上司ですよ。こんなんだから女子には大人気。バレンタインの時には誰よりもたくさんチョコレートを貰ってますよ」
沢田は少しおどけてみせた。
「そんなこと言ったって、去年は沢田君の方が高級なのが多かったじゃないか。オレのは結局義理なんだよなー」
佐藤は沢田に軽く反論してみせた。
「佐藤さんってやっぱりモテるんだ」
優香が沢田に聞くと、沢田も愛想よく優香に答えた。
「でも、すっごい愛妻家なんですよ。いっつも奥さんとデートしてて」
「知ってます。奥様にも何回かお会いしたことありますから、あのコーヒーショップで」
優香がにこやかに答えることができたのは、優越感を感じていたからに他ならない。
角まで来たとき、優香は極上の笑みで二人に挨拶をした。
「私はこっちですので、それじゃあ」
優香は佐藤たちとは反対の方向へ消えていった。
優香の姿が見えなくなったのを確認してから、沢田は意味有りげな顔を佐藤に向けた。
「部長、昨日と同じ服ですけどォ、隅に置けませんねぇ」
「その観察眼、仕事に生かしてくれるといいんだけどねぇ、沢田君?
昨日の報告書、数字が一桁違ってたよ。本当に見間違いが多いねぇ、君は」
沢田は煙に巻いたかのような佐藤の返事に鼻白んだ。