手に入れる女
オフィスに入って来た優香と顔を合わせた本橋は非常に驚いた。
本日の機嫌の良さは観測史上最高ではないだろうか。
挨拶もあまり自分からすることのない優香が、足取りも軽く、微笑みを浮かべながらオフィスに入って来た。
必要な指示を出す時もいつものようなイライラもとげとげしさも全くない。
本橋は、この、あまりウマの合わない上司に何があったのだろうか、と訝しく思いながら彼女が机の前を通り過ぎるのを眺めていた。
優香は張り切って仕事をしていた。
昨晩はあまり眠れなかったけれども、軽い興奮状態の優香は疲れを全然感じなかった。
さあ、仕事、仕事。頑張らなくちゃ。
気合いを入れて張り切ってパソコンの電源を入れる。
鼻歌まで出てきそうな勢いだ。
ふいにケータイが鳴った。
それは圭太からであった。
優香は、昨晩は圭太の家に行く途中であったことをそこで初めて思い出した。電話に出ると、圭太の声は明らかに安堵したようだった。
「優香さん! やっとつながった……昨日はどうしたの?」
そう言われて改めてケータイを見てみると、圭太からの着信とメールの量がものすごいことになっている。
電源を落としていたので全然気がつかなかったのだ。
顔がかあっと熱くなり、ヘンな汗が流れた。