手に入れる女
「うん、ごめん。急用ができちゃって」
「じゃ、連絡ぐらいしてよ、心配したよ?」
「ゴメンゴメン」
それ以上何か言うと、墓穴を掘りそうで優香は黙ったままケータイを握りしめていた。
電話の向こうで圭太がぶつくさ文句を言っている。
「…ったく、親父も昨日どっかに消えちゃったらしくてさー、お袋からもずっと電話があるし、優香さんも捕まらないし、散々な夜だったんだよ」
優香はドキリとする。
心臓の動悸が急に激しくなった。
心を落ち着かせる為に、一つ深呼吸をしてから、ゆっくりと圭太に聞く。
ちゃんとさりげない口調になっているだろうか?
心配だった。
「お父さんもいなくなっちゃったの?」
「うん。実は夕方ウチに来ててさ、その帰りから行方不明。もう、お袋が警察に届けるとかって大騒ぎしちゃってさあ」
だろうなぁ……。
「それで?」
「うん、さっきお袋のところに会社から電話があって、出勤はしてるみたい」
「どこにいたの?」
佐藤は、美智子に何と言い訳したんだろうか、と思いながら聞いた。
「さあ……それは聞いてない。なんかふらっと遊びに行ったら帰れなくなったとか言ってたから、海にでも行ってたんじゃない?」
圭太の口ぶりからはそれほど深刻さが伝わってこなかったので、優香はちょっとホッとした。
「そっか……。大変だったと思うけど、ま、無事で何よりだったね」
優香は当たり障りのない話をして電話を切った。
佐藤は、大丈夫だったんだろうか。連絡を取った方がいいのだろうか、それにしても、佐藤は一体どうするつもりなんだろう。