手に入れる女
次の日の朝も今まで過ごした数えきれないぐらいの朝と何ら変わるところはなかった。
結局美智子は外泊のことに一言も触れなかった。
いつも通り、朗らかで不機嫌になることもなく朝ごはんの支度をしている。
朝食のメニューもいつも通り、聡子が明るい声でおはよう、と言って来たのも普段通りだった。
家を出てからもそれは続いた。
駅までの道のりも同じ、通勤電車だって何の変哲もない。
街の人々が急ぎ足で会社に向っている様子も見慣れた風景だったし、職場の様子もいつもと同じだった。
あの夜が存在しなかったかのような、平凡な日常が繰り広げられていた。
本当にぼんやりとした夢のような一晩だった。
昼間、明るく照らされた太陽の光の下に立ち尽くしていると、その出来事が現実にあったのかさえも定かでなくなる。
佐藤は、別に忘れたいとか、なかったことにしたい、と思っていた訳ではない。
ただただ現実感を感じられなかっただけであった。
が……
職場につくとすぐに優香からメッセージが送られていた。
唯一、今までと決定的に違っていたことだ。
やはり一昨日の事は夢ではなかったのだ。
今日は会える?
短い、そっけないメッセージだったが、一夜をともにした女の馴れ馴れしさを感じさせる。
佐藤は、返信をしあぐねた。