手に入れる女

優香は佐藤からの返信がないことが気になって気になって何も手に着かないでいた。

あの朝、佐藤は確かにいたのだ。
まるで何年も一緒に暮らしていたかのような素振りだったし、駅まで腕を組んで歩いた感触だってしっかり残っているのに、朝別れてしまってからは全く音沙汰がない。

あんなに情熱的に抱き合ったのは、一体何だったのか。
初めて見せる佐藤のほとばしるような激しさに飲み込まれたのは優香だけだったのか。

丸一日が過ぎて、じりじりとしたあせりが優香を襲う。

圭太の電話で騒ぎになっているというのも聞いたのに、佐藤から状況を説明する連絡が全くなかったことも優香を不安にさせていた。

だから、今日の朝も一番でメッセージを送った。どうしても佐藤の顔が見たかった。
しかし、その日も佐藤から返信が来る事はなかった。

ーー私とはもう会いたくないんだろうか。呆れられた? 嫌われた?

優香の不安は大きくなるばかりであった。

優香はその夜、圭太を食事に誘った。
ニコニコと嬉しそうに笑う圭太を見ると、心が痛んだが、それはほんの一瞬のことで、佐藤の様子を知りたいという誘惑の方がずっと大きかった。

圭太によれば、佐藤は別段変わった様子ではないらしい。
何があったのかは特に話していないようだが、美智子もすっかり落ち着いていて普段通りなので、圭太も一安心しているようだった。





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