手に入れる女
こういう時、女は妙にはしゃぐ。
美智子と聡子ももちろん例外ではなかった。早めに来た佐藤家の人々は席に座りながら、圭太の彼女の話で盛り上がる。
「おーい」
圭太が手を振りながらやってきた。嬉しそうに陽気な声をあげる。
隣りには、すらっとした落ち着いた感じの女の人がいる。
それほど背の高くない圭太は、170センチ近くある優香と並ぶと少し突き出る程度でほとんど同じ高さだ。
「……カップルに見えない」
ぶすっとした声で呟いたのは聡子だ。
しかも、短めの髪の毛に、糊の利いたシャツのボタンを大胆に開け、綺麗な脚が強調されるようなタイトなスカートをはいているその彼女はずいぶん男前だった。
「……なんか意外」
それは肯定のはずんだ声ではない。
「ね? ママ」
聡子は美智子の方を向いた。
「あら……? のりさん、見て」
はしゃぐ女性陣の隣りで一人ウイスキーを傾けて感慨にふけっていた佐藤は、美智子に促されて何気なく二人の方に視線を向けた。
…………!!
目を疑った。
体が固まって周囲の雑音が消えた。
周りの景色も動きを止めた。
口は半開きのまま。
狼狽を隠しきれずに、ウイスキーのグラスを握りしめる自分の手に視線を落とした。
手の震えをなんとか抑えて呼吸を整える。
遠くの方から、美智子の声がぼんやり聞こえてきた。
「ねえ、あなた、あの人……ケータイの人じゃない?」
返事をしようとも、口をぱくぱく動かすだけで、言葉が声にならなかった。
二人が近づいて来るのに合わせて、美智子と聡子は席を立った。
佐藤ものろのろと立ち上がったが、二人の顔をまともに見る事ができない。
ーーだから圭太に口止めしていたのか? オレを驚かすために。