手に入れる女

メインのコースが終わり、デザートとコーヒーを待っている間に優香は手洗いに立った。
圭太もすかさず優香の後を追って席を外す。それを見ながら、美智子は佐藤に言った。

「圭太ってば、小泉さんに大分骨抜きにされてるわね」
「……ああ、まあいいんじゃないか」

佐藤は曖昧に返事をしたが、それが面白くなかったのか、聡子が横から口を挟んで来た。

「結婚前からこんな調子じゃ、尻にしかれっぱなしよ、きっと。あー、お兄ちゃん可哀想だなー」

普段だったら佐藤は娘がそんな意地の悪い言い方をするのをを黙って見過ごしたりはしない。
さっきのように、穏やかにたしなめて聡子のふるまいを改めさせたはずだ。

しかし、今の佐藤にそんな余裕はなかった。目の前から二人がいなくなっても、佐藤の息苦しさは変わらなかった。

「……ちょっとトイレに行ってくる」

佐藤は席を立った。
優香のねっとりとした、まとわりつくような空気から逃げたかった。

佐藤をがんじがらめにして、息の根を止めてしまうのではないか、
そんな重圧さえ感じていた。

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