手に入れる女
ひどく疲れた一日だった。
リビングのカウチに体を預けながら、佐藤はぼーっとテレビを目で追っている。
しかしくだらないバラエティ番組の空虚な笑いが虚しく響くばかりで、さっぱり頭に入ってこなかった。
佐藤の頭を占めているのは、今日再開した時の優香の顔ばかりだ。
優香を見た時の衝撃が今でもはっきりとよみがえってくる。
ーーケータイを拾って以来、あの娘にはふりまわされっぱなしだな……
全く、優香に出会って以来、佐藤は気持ちが落ち着かないことばかりだった。
いきなりキスをされた時も、一晩を過ごした時も、優香は佐藤の事情なんてお構いなしだった。
困った事に、佐藤には優香の後先考えない向こう見ずな激しさがたまらなく魅力的だ。近くにいるだけで優香に吸い寄せられてしまう。
そして昨日の食事。
圭太の隣りで幸せそうに微笑む優香は、結婚を決めて浮き立っている婚約者そのものだった。
ーーあれは、本心なのか? 本当に圭太との結婚を望んでいるのか?
オレへの当てつけでしているのだろう、と佐藤は問いただしたかった。
聡子の暴言にのっかって、ドキリとするようなことを訊いてきた優香。
向こう見ずで大胆な優香らしい言動で、じわりと佐藤をいたぶっていた。
その一方で、優香は圭太に愛しそうな眼差しを向けていた。
二人の親密さは、聡子に次々と意地悪を言わせるほどだ。
テーブルで顔を寄せ合って何やらささやいて楽しそうにクスクス笑う二人など、周りの方があてられてまともに顔をみれない。
圭太と優香がはしゃいでいるのを直視したくなかった。恋人同士の華やいだ声にも耳をふさぎたかった。
手洗いの前にいた二人を目撃した時、優香を圭太から引き剥がしたい衝動にかられた。