手に入れる女
佐藤は、その土曜日までにうまい言い訳を考えつく事はなかった。
もうすぐ圭太と優香がやってくる。美智子は、ケーキなどを焼きながら、いそいそとお茶の支度をしていた。
佐藤が美智子の背中に声をかけた。
「何か、足りないものとかない? 買って来ようか?」
美智子が振り向いて笑う。
「のりさん、大丈夫よ。準備万端だから。そこに座って待ってて」
「……わかった」
外に出られる口実を得ることもできそうにないようだった。
テーブルにはやけに小洒落たブーケが飾ってあり、もしも優香が気に入れば、それを式に使うのだと言って美智子は笑った。
ブーケには淡いピンクと白のバラが使われており、花嫁らしい華やぎがありながらも、可憐でたおやかだった。
優香には似合わない。
もっと毒々しくて大ぶりな花の方が優香にはふさわしい。
例えば百合。それもカサブランカのような高潔な花ではなく、オニユリ。品のない程に濃い斑点の入った、血のような色の百合。
まき散らす匂いが周囲の者を惑わす。
そういう花こそが優香にはふさわしい。
そんなことを思いながら、佐藤は所在無さげにリビングのカウチに座って、くだんのブーケをぼんやり見つめていた。
「ただいまー」
玄関から圭太の声がふいに聞こえた。打ち解けた陽気なざわめきが聞こえてくる。優香も一緒にいることが佐藤にはすぐわかった。
玄関に二人を出迎えに行って……佐藤は驚いた。