手に入れる女

「親父、何とか言えよ?」

怒りの収まらない圭太が、佐藤につかみかかろうとした時、それまでずっと黙っていた美智子が口を開いた。

「圭太、もういいのよ」

その声にはっとした圭太が美智子の方を振り向くと、ゆっくりと諭すように圭太に言った。

「お父さんを止めたところで、皆が幸せになれるわけないのはわかるでしょう。こういうことは元には戻らないものよ」

さっぱりとした顔をする美智子の声は思いがけず明るいものだった。美智子は佐藤の方を振り返った。

「のりさん、いつ出て行くの?」

「うん、美智子が良ければ、明日までいさせてもらえないかな」

「もちろんよ。じゃ、ご飯食べましょう。」

美智子はテキパキと朝食の支度を始めた。
生来朗らかな性格の美智子は、こんな時でも周りの空気を暗く重たくすることがなかった。

知らない人が佐藤家の食卓を見たならば、仲のいい家族と思うに違いない。
久しぶりに家族全員揃って家で食事をするのが、佐藤が家を出て行くと決めた後だというのは何とも皮肉な話である。

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