手に入れる女
「ママはパパが大好きだから……すごくパパを愛していたから……ママがパパのためにしてあげられることはパパを許すことだけなのよ」
「そんなの綺麗ごとにすぎないよ!」
「そうかもね……でも、いいのよ。だから、聡子もパパのことを許してあげなきゃだめよ」
「そんなことできるわけないじゃない。パパは私たちを裏切ってお兄ちゃんの婚約者と不倫したんだよ。
家族を裏切っていい理由なんてあるの?」
もしかしたら、自分以上に聡子は佐藤の不倫に傷ついているのかもしれない、と美智子は思った。
佐藤は、聡子自慢のパパだった。
「ホントだね〜。ひどいね、パパは。何であんなことしちゃったんだろうね」
軽く受け流したような言い方は、聡子の怒りにさらに火をつけた。
「だから!」
美智子は喰ってかかってくる聡子を静かに見つめた。
「パパもそう思ってるんじゃない? パパにだって感情はあるのよ。
時々、人は自分の気持ちをコントロールできなくなっちゃうってことよ。
もしかすると、パパは今までずぅっと無理してたのかもよ」
それでも聡子は全然納得したような顔はしなかった。
「これからどうするの?」
美智子は、犬でも飼う、と言っておどけてみせた。
「ママァ!」
聡子は呆れて言葉が続かないようだった。
美智子は、最後に抱きしめられた時の佐藤のあたたかさを思い出していた。
「うん、でもしょうがないね。これがパパとママの決断。これでいいのよ」