手に入れる女

すれ違いざま、優香は驚いて思わず美智子の方を振り返ったが、美智子は何もしゃべらなかったかのように、立ち止まる事も振り返る事もなくスタスタ歩き続けていた。

それは、ほとんど無意識のうちに出た言葉だった。
今の今まで、優香が憎いとか一矢報いてやろうとか、全く考えていなかった。
それなのに、すれ違ったその瞬間、心の奥から飛び出してきたのが、「ドロボー猫」だった。

美智子はひたすら前を見て歩いていた。

どんどん歩いているうちに、目に飛び込む風景がぼやけてきた。

ーーどんなにみっともない顔になってるんだろう?

それでもそんなことはお構いなしにどんどん歩き続けた。
歩みを止めたら、涙が決壊して止まらなくなるだろう。

ひょいとコーヒーショップのウィンドウに映った自分の顔をみて美智子は驚いた。

そこには、美智子にちょっとだけ似た、歪んだ醜い顔をした女が立っていた。
美智子は思わずそこに立ち尽くして、ウィンドウに映った自分の顔を食い入るように見つめた。

ーー本当に私はこんな醜い顔をしているの? 
この先、一生こんな顔をして生きていかなければならないの? 


< 215 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop