手に入れる女
すれ違いざま、優香は驚いて思わず美智子の方を振り返ったが、美智子は何もしゃべらなかったかのように、立ち止まる事も振り返る事もなくスタスタ歩き続けていた。
それは、ほとんど無意識のうちに出た言葉だった。
今の今まで、優香が憎いとか一矢報いてやろうとか、全く考えていなかった。
それなのに、すれ違ったその瞬間、心の奥から飛び出してきたのが、「ドロボー猫」だった。
美智子はひたすら前を見て歩いていた。
どんどん歩いているうちに、目に飛び込む風景がぼやけてきた。
ーーどんなにみっともない顔になってるんだろう?
それでもそんなことはお構いなしにどんどん歩き続けた。
歩みを止めたら、涙が決壊して止まらなくなるだろう。
ひょいとコーヒーショップのウィンドウに映った自分の顔をみて美智子は驚いた。
そこには、美智子にちょっとだけ似た、歪んだ醜い顔をした女が立っていた。
美智子は思わずそこに立ち尽くして、ウィンドウに映った自分の顔を食い入るように見つめた。
ーー本当に私はこんな醜い顔をしているの?
この先、一生こんな顔をして生きていかなければならないの?