手に入れる女
こと息子に関しては、母親に比べて父親はいたってのんきである。
娘の事は一々心配するのと対照的に、息子の生活にアレコレ口を挟むのを佐藤は好まなかった。
「そうねぇ。今度、様子を見に行ってみようかしら」
「向こうも忙しいだろうから、入り浸るのはやめとけよ。そんなことより、歌舞伎のチケット取ったんだけど一緒に行くだろう?」
「あら、デートのお誘い?」
嬉しそうにちょっと首を傾げて聞いて来た。
佐藤は、いくつになっても頬をほんのり染めてはしゃぎながら確認する美智子を可愛いと思う。
「そう、久しぶりに一緒に歌舞伎見るのも悪くないと思ってさ。買っちゃった」
「そうね。じゃ、着物を新調しちゃおうかしら」
美智子は華やいだ声をあげた。
「ええ? 歌舞伎のたんびに着物買わされちゃたまらんのだけど」
佐藤もおどけてみせる。
「あら、大丈夫よ。久しぶりの歌舞伎じゃない。そんなにしょっちゅう行く訳じゃないんだし」
美智子は楽しそうに佐藤の顔を見た。