手に入れる女
「今日そんなに忙しかったんだ。早く帰って来たからてっきり忙しくないのかと思っちゃった」
美智子はさらに核心をついてくる。佐藤はまたドキリとした。
天然は最強だ。カマかけてるはずはないと思いつつ、佐藤は必要以上にうろたえてしまう。
「あー、日中はバタバタしてて、食べるの忘れたんだよね」
「それは残念だったね。明日買っとこうか〜?」
美智子は朗らかに返事をする。
「ん〜」
ちょっと考えて、ショートケーキをリクエストした。
美智子は指でオッケーのサインを出したが、すぐに佐藤は自分を納得させるように、
「ショートケーキでいいんだよな?」
と低い声で念を押した。
「何、それ。自分で言っといて。ヘンだよ、のりさん。何かさっきからヘンじゃない?」
「そうかな」
努めていつものようにふるまっているつもりだが……
心の中の動揺が見透かされているのではないか、と佐藤は内心冷や汗をかいていた。
美智子はそんな佐藤の動揺など気にも留めないで、ふと思いついたように佐藤に提案してきた。
「ねえ、じゃいっそ明日ケーキ屋さんに一緒に食べに行こうよ。そしたら、今、決めることもないじゃない?」
「何、わざわざケーキ食べに出てくるの?」
「ダメ?」
「ダメじゃないよ、ただ……面倒じゃないかな、って思って」
「全然そんなことないよ。じゃ、決まり。いつものコーヒーショップね」
美智子はスキップをしながらくるくると踊り出した。