手に入れる女
次の日の夕方。
美智子は待ち合わせより少し早めに来て、ゆっくりとコーヒーを啜っていた。
なんとなく店内を見回していたら、すぐ横を優香が通りかかる。
見覚えのある顔に、だれだろう……と記憶を辿ると、以前、このコーヒーショップで会った、佐藤の知り合いの女だとすぐに気がついた。
美智子は無意識のうちに優香を呼び止めた。
「あら……あなたはあの時の、ケータイ落とした方よね? え……と、小泉さんでしたっけ?」
通りすがりに声をかけられたので振り向いてみれば、美智子がにこにこと微笑みながら優香を見ていた。
優香は一瞬にしてその場に凍り付く。
「本当にここのお店、よくいらっしゃるのね」
優香の目をしっかり見定める美智子に、優香も逃げ出す訳にはいかない。
「ご主人様と待ち合わせですか?」
「そう。一緒にケーキを食べに行こうってことになってね。
おかしいのよ、あの人ったら、夕べ帰ってくるなり、チーズケーキ食べ損なったって言ってね。
やっぱりショートケーキが食べたいなんて言うから、じゃあ、いっそ一緒に食べよう、ってことになって。
彼、甘いものに目がないから、どうしてもケーキが食べたくなっちゃったんじゃないかな」
昨晩のやり取りを思い出だしているようで、クスクス笑っている美智子は、優香が無言でじっと見つめているのに全く気づいていなかった。