手に入れる女
「佐藤さんはチーズケーキがお好きじゃないんですね」
努めて平静を装うとしてはいるもののどうしても冷たい声になってしまう。しかし美智子は全く気づいていなかった。
「どうかしらね。嫌いだって聞いたことがないけど、夕べはたまたまショートケーキの気分だったんじゃない?
優香さんは何がお好きなの?」
愛想良く聞いてくる。
無神経なまでに……無邪気な美智子の質問に、優香は少しだけ意地悪な気持ちが芽生える。
「私は、チーズケーキの大ファンで、チーズケーキなら、美味しいお店をいくらでもご紹介出来たのに、残念です」
けれども、美智子の天性の鈍さか、優香のどす黒い感情など全く気づく様子もなく、返って来るのは、朗らかで無邪気な応えだった。
「まあ、本当に残念だわ。じゃ、今度、佐藤がチーズケーキを食べたいっていったら、あなたにどこのお店がいいか聞くように言っておくわね」
「ぜひ、そうして下さい。それじゃ、お先に」
優香はにこやかな顔を向けてはいたが、その笑顔は能面のように固まっていたし、その声は触れたら切ってしまいそうな鋭い声で、それだけ言い捨てると踵を返して外にでていった。
下を向いてコツコツ歩いていると自然と涙がこぼれてくる。
優香のケーキを拒否した佐藤は、美智子と一緒にいそいそとケーキを食べに行くのだ。
優香は自分が惨めであった。