手に入れる女

優香は一瞬の沈黙の意味を悟った。
不敵な笑みを浮かべる。

「せめてもの抵抗を試みてる、ってわけですね。……無駄なのに」

佐藤は口元に手を当ててさっと目をそらした。顔がかすかに赤くなっている。
形勢が逆転したのは明らかだった。

ーーあなたも私と同じ。気持ちを抑えるなんて無理なのよ。

優香は勝ち誇ったように唐突に話を変えた。

「この前、奥さんとケーキを食べに行ったでしょう」
「……美味しいチーズケーキを食べ損なったものですから」

苦笑いを浮かべながら佐藤は答えた。

ーー食べ損なった? 自分で断ったくせに?
涼しい顔で、図々しい言い訳をする佐藤に優香は呆れた。
こうなったら、少し意地の悪いことを言ってみたくなる。

「それでチーズケーキが頭から離れなくなった?」

テーブルに肘をついていた手にあごを軽く乗せていた佐藤は、ふっと小さく息を吐いて頭を軽くふった。
何と答えようか考えているようだ。

「違いますよ。『妻』が食べたそうにしてたんですよ」

佐藤は「妻」を強調した。


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