手に入れる女
ーー今日も機嫌は悪くなさそうだな。ただいまの鼻歌はテイラー・スウィフトか、悪くないぞ。
ゴキゲン指数85だな。
最近の優香の感情の起伏があまりにも激しいので、本橋は、ここのところ毎朝さながら天気予報のように、優香の機嫌予報をしている。
本橋はいつのまにか優香の機嫌を分析しながら仕事をするのがくせになっていた。
仕事に厳しい優香は、本橋のちょっとしたミスや書類の不備にも容赦ない。
細かいところまで理詰めで議論を組み立てていく作業自体なかなかしんどいのに、少し気をぬくと、優香が重箱の隅をつつくようなささいな矛盾も突きつけてくるので、優香と仕事をするのはとてもストレスがたまる。
前の失敗なども意外と覚えていて、同じようなミスをするとそれはそれはねちっこい。特に英文でのやり取りの時は、本橋自身、出来の悪さを自覚しているので、なるべく優香の機嫌のいい時にお伺いを立てるのは鉄則であった。
それにしても、ロースクール卒業だか何だか知らないが、ちょっと英語ができる帰国子女というだけで、自信たっぷりの不遜な態度をとる優香が本橋はどうしても好きになれなかった。
仮りにも女ならもう少し可愛げのある態度を取るとか、スキを見せるぐらいの方が好感がもてるだろうと思うのに、優香には全くそんなところはなかった。
優香が堂々とパートナーの地位を狙ってるのも気に入らなかった。
「小泉センセイ、ここのところずっと機嫌がいいよ」
本橋は田崎に愚痴った。