その男、猛獣につき
「もう、本当にすみません…」

私がまた、頭を下げたので先生はクスリと笑った。

 

「今日の有田は、謝ってばっかりだな」

 

そう言いながら、今度は私の頭にポンポンと手をのせる。

 

やっぱり先生の手は暖かい。

先生の優しさが伝わってくるようだ。

 

「興梠先生。私ずっと思ってましたけど、先生はやっぱり優しいですよね。≪冷徹の興梠先生》なんかじゃなくて。」

 

ちょうど車は信号で停まった。

先生は驚いたような、少し戸惑ったような顔をして私を振り返る。

私の頭に手を置いたまま。

 

 

夏の終わりの夕暮れ。

先生の顔に射し込む光は眩しいくらいにオレンジ色に輝いている。

 

私と先生は、見つめ合ってしまっていた。

 

< 100 / 328 >

この作品をシェア

pagetop