その男、猛獣につき

「今日は用があって、治療手技の指導出来ないから。じゃあ、お疲れ」

先生の言葉が私の頭の上から降ってくる。

 

私、完全に避けられている。

 

先生の言葉に落ち込んでしまう自分を奮い立たせ、無理やり口角を上げて笑顔をつくる。

「分かりました。お疲れさまでした」

 

先生は私を見向きもせず、まるで逃げるかのようにリハビリ室を後にした。




私は、先生の姿が見えなくなるまで、ただそこに立ちすくんでいるだけだった。

 

< 150 / 328 >

この作品をシェア

pagetop