その男、猛獣につき

「有田、お前、何やってるんだ?」

低くて、色気のある声が耳に入ってくる。

 

コンビニの軒下の灰皿に、先生がまだ長さのある煙草を押し付けて私に声をかけた。

「せ…せんせい…」

先生の顔を見るとなんだか安心してしまった。



さっきまで避けられていたのに、先生の態度にあんなに傷ついたのに、それでも先生を見たら安心して、堰をきったように涙が吹き出した。

 

「自転車、壊しちゃいました…」

先生に借りた大切な自転車。



泣いたせいで言葉を詰まらせながら伝えると、先生は柔らかなため息を1つだけついて私の頭にポンポンと手を置いた。

 

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