その男、猛獣につき
泥だらけの服では帰れないからと、先生がTシャツとハーフパンツを貸してくれたけれど、私にはブカブカ。
「有田、子供みたいだな」
「どうせ、子供ですよ」
バスルームを出た瞬間に、クスリと笑った先生に、なんだか照れくさくてすねた振りをする。
先生の貸してくれた服は、あたりまえだけど先生の匂いがしてなんだか心がくすぐったい。
「ちょっと、こっち来い。髪の毛乾かすから」
「えぇ!!自分で出来ますから、それくらい」
「いいから、ほら」
そう言ってリビングのソファーの床に私を引っ張って座らせると、興梠先生は私の頭をドライヤーで乾かし始める。
先生、これは私が実習生だから、ですか?
昨日は忘れろって言っていたのは先生なのに…
先生の指が髪の毛の間を通っていく度に、私の鼓動が聞こえてきそうなほど大きくなる。
それでも、やっぱり先生を意識すれば意識する程、先生の昨日の言葉が頭をかすめ、モヤモヤしてしまう。