その男、猛獣につき

頬に涙の粒が流れて始めるまで、それほど時間はかからなかった。


先生は、そんな私を一瞬、戸惑ったような瞳で視界に入れたけれど、すぐに視界からフェードアウトさせる。

「少し頭冷やせ。それから、気をもたせるようなことして悪かった。」

そういって先生は私に背中を向け、リハビリ室へと帰っていく。

 

先生の背中を見送りながら、ふいに孤独感と後悔が津波のように押し寄せる。



周囲の温度が一気に冷たくなった気がした。

 

★☆★

「明後日の日曜は、バスケ中止だから。なんせ、台風がさぁ」

「そもそも、誘われてませんよ。多分、もう今後一切誘われない気がします」

自分が口にした言葉に、自分でも驚くほど傷ついてしまう。

 

「何で?なんかあったの?あれから」

金曜の夜、台風が近づいているため車椅子バスケの練習が休みという連絡をくれた敦也さんは、私の言葉に驚いたようで、すっとんきょうな声をあげる。

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