その男、猛獣につき


「そっかぁ。主税も舞花ちゃんに、気持ち切り替えて本業の実習に集中してもらいたかったんだと思うよ」

 

さすがにキスのことまでは言えなかったものの、敦也さんに聞いてもらったこの1週間の出来事。

 

 

「そんなの分かってますよ。それでも症例のこと以外、本当に今日まで何にも話してくれませんし、喋りかけてもくれません。このままじゃ、私も来週くらい山に脱走しそうです」

 

私の言葉に、敦也さんはガハハといつものように笑う。

興梠先生に怒られた火曜日から、有言実行という言葉がピシャリと当てはまるくらい、先生は私を避けるようになった。

 

もちろん、実習時間はいつもと変わらないし、質問にもしっかりと答えてはくれる。

けれど、業務後は私を避けるようにすぐに帰ってしまうし、視線すら合わせてくれない。

 



あと、残り4週間をこうやって過ごすのかと思ったら、今すぐにでも心が折れそうになってしまう。
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