その男、猛獣につき
★☆★
「おーい。聞いてる?有田ちゃん」
竹内さんに目の前で手を左右に振られて、私に話が振られていたことにようやく気付く。
「えっ、あっ。ごめんなさい。なんでしたっけ?」
「台風。どこに避難する予定なの?」
竹内さんは私の反応に苦笑いしながら、応える。
昨夜の敦也さんとの電話から私はずっと、先生にどうやって服を返すか、車椅子バスケに行きたいって話をするかばかりを考えている。
「ここに泊りますよ」
「直撃の進路なんだって。気をつけてね」
ニュースで繰り返される台風情報を指さし、嶋本さんが優しく笑う。
外はまだ小雨がぱらつくばかりで、台風なんて来る気配はないのに…。