その男、猛獣につき

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「おーい。聞いてる?有田ちゃん」

竹内さんに目の前で手を左右に振られて、私に話が振られていたことにようやく気付く。

 

「えっ、あっ。ごめんなさい。なんでしたっけ?」

「台風。どこに避難する予定なの?」

竹内さんは私の反応に苦笑いしながら、応える。

 

昨夜の敦也さんとの電話から私はずっと、先生にどうやって服を返すか、車椅子バスケに行きたいって話をするかばかりを考えている。

 

「ここに泊りますよ」

「直撃の進路なんだって。気をつけてね」

ニュースで繰り返される台風情報を指さし、嶋本さんが優しく笑う。




外はまだ小雨がぱらつくばかりで、台風なんて来る気配はないのに…。

 

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