その男、猛獣につき
先生の懇切丁寧なレポートの指導は、一時間が経とうとしていた。

「そろそろ、休憩するか」

先生はそう言うと、1人リハビリ室を出て缶コーヒーを買って戻ってきた。

 

「これは、有田の分」

そう言って私の目の前に差し出されたのは、いつかの甘いカフェオレ。

 

「ありがとうございます」

受け取る手に力が入る。先生はコーヒーを私に渡すと自分のブラックコーヒーのプルタブを開け一口飲んだ。

 

急に無言の時間が2人の間を流れる。

 

外の風の音が大きくて、また一段と台風が近づき、風が強くなってきた様子を窺わせる。

 

「先生?」

「ん?」

「外。帰らなくても大丈夫ですか?」

「この雨と風じゃ帰れないなぁ」

先生は一言呟くとコーヒーを流し込んだ。

 

< 181 / 328 >

この作品をシェア

pagetop