その男、猛獣につき
「…ここに居て、欲しいです」

 

あぁ、穴があったら入ってしまいたい。

耳まで熱を帯びたのが分かる程、口にした言葉は恥ずかしくてうつむくしかない。

 

「だと、思った」

 

先生はフッと笑ったような声を頭から降らせると、私の頭をぐちゃぐちゃに撫でた。

 

「今日は台風なんて緊急事態だから、実習以外関わらないなんて約束は一時解除する」

顔をそらして、ぶつくさという先生に、さっきまでの困惑が少し解消された気がする。

 

ガタガタガタ…

 

2人の間を少しだけ穏やかな空気が流れたのもつかの間のこと。

 

風雨はさらに強さを増して、窓ガラスに近くの紅葉の枝が打ちつけられる。

 

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