その男、猛獣につき


パチッ、ピッ、ピッ。

 

私が先生の腕の中で動けない状況にいること数分。

順序良く照明が付き、物理療法の器具の電源が入っていく電子音が聞こえる。

 

「非常用電源に切り替わったみたいだな」

そう言って天井を見上げ、少し腕の力を緩めた先生。

私は、その瞬間に先生の腕の中から抜け出し、距離を取る。

 


「なんか、すいません。停電でびっくりしてしまって」

恥ずかしくて顔なんて見ることが出来ず、私は頭を指先でかきながら言い訳がましく伝える。


「俺も、つい」

先生も気まずそうにこたえる。

< 186 / 328 >

この作品をシェア

pagetop