その男、猛獣につき
「もしかして、服、わざと忘れたんですか?」
「いや、それはだな…」
無造作に置かれた、紙袋を確認して私が尋ねると、先生はため息交じりに返事をする。
服を取りに来たのは口実で、様子を見に来てくれたんだぁ。
先生の不器用な優しさを感じて、心に温かいものが一気に流れ出してくる。
やっぱり、先生のこと、私大好きみたいだ。
こんなに優しくされたら、私忘れられない。
先生の優しさを感じれば感じる程、どんどんと好きな想いが溢れだしてきそうになる。
それなのに、忘れなきゃいけない気持ちだと心のどこかで訴えかける冷静な自分がいて、心がえぐられるように痛い。
「実習生ひとり、こんな時に病院に残しておくわけにもいかないだろう」