その男、猛獣につき

「えっ?!」

いったい何が起きたのか、理解できず、目を開けると至近距離には先生の顔がある。

 

目を白黒させながら、思わず自分の右手で唇に触れる。

 

 

先生の唇の感触が残っていて、動揺を隠しきれない。

 

そんな私を見て、先生は目を細めて笑う。

「ご褒美。森田さんの件、有田なりに必死で頑張ったから」

 

少しだけうるんだ瞳で私を見つめた後、先生はクルリと私に背を向けて階段を昇り始める。

 

 

「ほら、有田。行くぞ!!仕事だ、仕事」

 

 

何事もなかったかのように、いつも通りの興梠先生のテンションだから、私は激しく頭の中が混乱してくる。

 

 

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