その男、猛獣につき
「それに…、この間だって手を繋いだのに、平日になったら何もなかったみたいに…」

 

「私、そんなことされたらドキドキするし、何もなかったことに出来る程の、大人じゃありません」

 

 

私が先生の背中に向かって矢継ぎ早にぶつけた言葉を受けて、先生は数段昇っていた階段を、スタスタと軽やかに降りて私がいる非常階段の扉の前に戻ってくる。

 

 

「有田も大人なら、今のキスの意味くらい自分で考えろ」

 

ぶっきらぼうに頭を掻きながら先生は言うけれど、口角はいじわるな笑みを含んでいるかのようにニヤリと上がっている。

 

「だから私、先生みたいに大人じゃないんです。だから、この間も言ったんですけど、こんなことされたら…」

 

 

「勘違いしてしまう?」

 

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