その男、猛獣につき
「何もないですよ、本当に」

 

どうやら嘘をつくのが下手みたいだ。

声がひっくり返ってしまって、動揺を隠しきれない。

 

 

「有田ちゃんがしっかり猛獣をコントロールしてもらわないと、私たちが困るからね」

 

ウフフと意味深に微笑みながら、嶋本さんが囁く。

 

「猛獣さんは、有田ちゃんの実習終わっちゃったらどうなるのかしら」

 

「前みたいに猛獣に戻ってもらったら困るわね」

 

「いっそのこと、有田ちゃんがうちの病院に就職してくれたらいいのに…」

「そうね!!それ、いい考えよ。竹内さん」

 

「えぇ!!いやぁそれは…」

 

2人の話の流れが想定外の私の就職の話になって慌てる。

 

でも、もしそうなったら、先生の傍に…。

いやいや、でもそんな公私混同しちゃいけない。

 

ふと、そんな甘い考えが浮かんできたのを、冷静な自分が諌めた。

 

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