その男、猛獣につき
「まずは、国家試験に受かること。応援は全力でするから」

帰り際、私の頭をガシガシと撫でながら満面の笑顔を見せる主税さんに私も笑顔を見せた。


主税さんが応援してくれたら、きっと頑張れる。

主税さんの笑顔をみていると不思議とそう思えるのが不思議だ。




「じゃあ、帰るから」
「うん。私、主税さんみたいな理学療法士になりたいから、勉強も死ぬ気で頑張る!!!」


「はははっ。死なれたら、俺が困る」


名残惜しいけれど、今は自分のことを頑張るしかない。



私は、涙が出そうになるのを堪えて、満面の笑顔を見せる。
主税さんはそんな私に優しく微笑むと、静かに車を発進させた。


小さくなっていく主税さんの車に大きく手を振る。



10月も2週目を迎えた、秋の夕暮れ。

私はオレンジ色に染まる空の下、主税さんとの8週間を思い返した。


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