その男、猛獣につき
「有田、レポートは順調か?」
ラーメン屋を出て、先生の車の助手席に乗り込んだ私への第一声は、実習のレポートのことだった。
カーナビを操作しながら、私の存在すら視界になんて入っていない。
わかってる。
先生と私は、バイザーと実習生。
それ以外何でもない。
今日はもう何回、そんなことを自分に言い聞かせているのか分からない。
それでも、そう言い聞かせるしかない私は、本当に今日はどうにかしている。
「昨日、頑張って終わらせました。…一応」
完璧に、とはいかないけれど、終わったのは事実だ。
「それなら、今日は暇だろ?」
えっ?!
そんな反応が、きっと顔に出ていたのだろう。
「それとも、彼氏と予定でもあるのか?」
どうせ、彼氏なんていませんよ。
ちょっと卑屈な顔すると、先生はまた意地悪な笑みを浮かべた。
「暇なら、もう少し付き合え」
「はい!!」
もう少し先生と一緒に居ることが出来る。
そのことが嬉しくて、私は満面の笑顔で頷いた。