その男、猛獣につき
明らかに戸惑って、逃げるように走り去った有田の後ろ姿を、呆然と見ながら、後悔と自責の念が沸き上がってくる。
「あぁ、本当何やってんだ、俺」
もう一度、呟くと俺は車を静かに発進させた。
明日から、またバイザーと実習生。
それだけの関係だ。
自分を落ち着かせようと、何度も言い聞かせる。
それなのに、胸がチクリと痛みを感じる。
雨上がりの8月末の夕暮れ。
俺は、心のどこかに痛みを感じながら車を走らせた。
明日から猛獣使いに翻弄されることも知らずに……。