シークレットな関係
「苦手なら、そういう役は避ければいいだろ」
「そうもいかないの。子供の頃と違って、キスシーンとかベッドシーンとか必要になってくるの。でも・・・俳優さんと向き合うと硬くなって。台詞が言えなくて五十回もNG出しちゃって・・・それ以来役が取れなくて、今に至ってる」
二十歳で出演した恋愛ドラマ。五十回もNGを出したことはすごいトラウマになっていて、空気の悪くなった撮影現場と相手役の俳優さんの苛立った表情ははっきり覚えている。
いまだに夢を見て夜中に起きることがあるのだ。
あれ以来ドラマの話は来ないし、舞台のオーディションを受けても落ちてばかり。
私には、制作側の目に留まるような輝きがないのかもしれない。
特別美人でもないし、巨乳でもないし、これ!という特徴がないもの。
「ふーん、“硬くなる”か・・・」
「ね、わかったからもういいでしょ。それよりもケーキ食べようよ!すごく美味しそうだよ!」
微妙な空気をごまかそうと、妙なテンションで話してしまう。
若くして課長になってる高橋とは雲泥の差なんだもの、私ったらすごくカッコ悪い。
バイトや派遣社員で細々と食い繋ぎながら全身の美容に気を使って、ドラマを見ていろいろ研究して人気の女優さんを真似てみても結果はついてこないし、パッと出てきた新人さんに役をさらわれることもある。
輝きを増していく子をメディアで見て嫉妬する自分が醜くて嫌だ。
『売れるまで禁止』とSNSもやらせてもらえないし。
もう、諦めた方がいいのかな・・・。