シークレットな関係
「あんたいつもあそこで発声練習してたもんねえ。私、劇団の子かな?ってずっと思ってたんだよ。頑張ってるなーって。ようやく蕾が付いたって感じだねぇ。おめでとう!これからも応援してるわ!」
頑張ってねー!と笑顔で去っていくおばちゃんに頭を下げ、河原に下りた。
まだ身近な人たちばかりだけど、応援して見てくれる人たちがいる。
これはすごい進歩で、とても嬉しいことで、やる気がみなぎってくる。
朝の光を受けてキラキラと光る水面はいつもと変わらずに見えるけど、絶えず新しい水が上流から流れてくるのだ。
私は、新しい水に流されているだけじゃなく、流すほうでありたいと思う。
今は、まだまだ流されているばかりだけれど、いつかきっと流れを作る人になるのだ。
「いつかそっちに行ってやるー!がんばるぞー!!」
ありったけの声を出して上流に向かって叫ぶ。
専務は相変わらず宇津木晴香押しだけど、私だって負けないんだから。
専務のことを思い出せば水面がキラッと光る意地悪眼鏡に見える。
それを吹き飛ばす勢いで声を出した。
発声練習を終えて気分がスッキリし、アパートに戻るべく走りだす。
その途中で、少し後ろ辺りを誰かが走っていることに気付いた。
その足音は、つかず離れずの感じでついてくるように思える。