シークレットな関係
夜七時の会議室。
風を伴った激しい雨が窓を洗っていて、向かい側のビルが歪んで見える。
掃除婦のおばちゃんが言った通りの天気になった。
「どしゃ降りだな」
頭の上から降ってくる声に「台風みたいだよね」と返す。
高橋は今日も残業だからこれくらいしかできないと、私は腕の中にすっぽり納められている。
「櫻井はどうやって帰る?タクシー使えよ。呼んでやるから」
「そんなのもったいない。大丈夫、傘があるから」
「今日は晴れていたのに用意がいいな」
意外そうな声を出すから、掃除婦のおばちゃんにもらったことを話すと、櫻井らしいなとクスクス笑った。
暫くして頭の上からため息が聞こえ、腕の中から解放された。
そして昨日と同じように高橋の手が頬を包みこみ、今夜は唇に触れるだけのキスをしてきた。
軽く唇を吸われてリップ音が鳴り、彼の親指が私の唇をそっと撫でる。
見つめてくる瞳が殺人的に色っぽくて、胸の鼓動が速まる。
こんないつ誰が入ってくるとも分からない場所でオフィスラブの練習なんて、スリルと彼の色気で気がおかしくなりそうだ。
それに胸がドキドキしすぎて、いつか心臓が止まるのではないだろうか。
「土日、何してる?」
「朝一ジョギングして、河原で発声練習してる」
「へえ、がんばってるな」
「マメにしないと声が出なくなるもの」