シークレットな関係


みっちりとは──“十分に行うさま”、か。

思わず辞書で調べてしまった。

そして今日の占いは『思わぬ拾い物があるかも』らしい。


ちょっとだけ、いいことが起こる予感がした土曜の午前十時。

『カフェ ルーベル』で高橋と待ち合わせて紅茶とスコーンを楽しみ、お店の雰囲気をゆっくり味わった後「そろそろ行くぞ」と連れてこられたのは高層マンションの六階。

高級感を醸し出す飴色のドアのわきには観葉植物の鉢植えが一つ置いてある。

この植物の名前知ってる、確かベンジャミンだ。

と、そんなことはどうでもよくて・・・。


「ここは高橋の部屋なの?」

「そう俺の部屋。まさか、怖じ気づいたのか?」

「そんなことない!ただ、すごくおしゃれなマンションで、家賃が高そうだなーと思っただけだから。駅から近いよね。いいところに住んでるんだね!さすが高橋だね!」


早口で言葉を並べ立て、全然平気なことをアピールする。

一人で男性の部屋に入るのはこれが初めてだとは、とても言えない。

すると高橋はイジワルそうに笑って玄関ドアをいっぱいに開き、私に入るよう促した。


「どうぞ。お入りください、お嬢様」

「お・・・おじゃま、します」


ぎこちなく靴を脱ぐ私の背後で、カチリとカギの締まる音がした。

高橋は『ラブシーンの練習相手』で『仮の恋人』で、私は『女優』。

緊張することは何もない。

ただ彼が何をしてくるのかわからないから、ドキドキしてるだけ。

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