シークレットな関係
「ところで櫻井、なんで派遣社員なんてやってんだ。お前タレ」
「ちょっと、待ったー!!」
口にしてほしくないことを言われそうで、焦ってデスクを叩いて立ち上がってしまい、バン!と大きな音が出た。
周りが静まった気がしてハッと我に返ってフロアを見回すと、ほかの社員がパソコン画面の向こうからこっちを見ていた。ひそひそと話す声もして、超気まずい。
「すみません!何でもないです!デスクに虫がいたんです。その、驚かせてごめんなさい!」
「虫なら殺虫剤があるから持ってくるわ。待ってて」
そう言って席を立つ女子社員を「もう大丈夫ですから、ありがとうございます」と制して、高橋に向き直った。
「高橋、さん、一体何を言うつもり・・・ですか?」
声を潜めつつも精一杯の迫力を込めて言うと、高橋はキョトンとした顔をした。
「何ってお前・・・絶対成功させる!って意気込んでいたあれのことだよ。どうなったんだ。やめたのか」
「やめてないです。そのことについては・・・その、大人の事情があるんです」
「ふ~ん。まあ、今ここにいるってことはどういうことか分かるから。もう聞かねえよ。じゃあお疲れ」
手をひらりと振って隣を通り過ぎる高橋の袖を咄嗟に掴んだ。
「何だよ、離せよ。俺は帰るんだよ」
「・・・決めつけないで」
「は?」
「どういうことか分かる、って。何も分からないくせに、勝手に決めつけないで」
「・・・離せよ」
「こんな風に成功してる人には、絶対分からないもの」