シークレットな関係
今まで感じてきた悔しい思いとか、勝手に決めつけられた憤りとか、新年からの不運続きとか、いろんな思いがごちゃ混ぜになり悲しさがのどまでせり上がってきた。
高橋の袖を掴んだまま唇を噛みしめ、必死に涙を堪えていると、手首をぐっと捕まえられた。
「ったく、お前なあ。ちょっと来い。とにかく出るぞ」
「え?」
そのままぐいっと引っ張られるから慌ててバッグを掴む。
下行きのエレベーターの中、高橋は無言のまま腕を組んで壁にもたれている。
最初誰も乗っていなかったエレベーターは、各階で止まるごとに人が入ってきてすぐにいっぱいになった。
ぎゅうぎゅうと押されて自然に高橋にくっつくと、私の目線は彼の胸のあたりにあった。
こんなに背が高くなったんだ。
どこのブランドなんだろう、割合仕立てのいいスーツを着ている。
私も彼も四捨五入すれば三十歳だ。
会うのは約八年ぶりくらいか・・・時の流れと生活力の差を感じてしまう。
会社の外に出ると高橋はタクシーを捕まえ、乗れと言われて素直に従う。
後部座席に並んで座った彼は、運転手に店っぽい名前を告げたあとスマホを耳に当てた。
「あー俺だけど。悪い、今日は行けなくなった。そのうち埋め合わせするから」
誰と話しているのだろうか。
考えてみれば役職者が定時に帰るなんて、大事な用事があるときくらいかもしれない。
前の職場では、長の付く人は残業ばかりしていたもの。
「ごめん。用事があったんだよね」
スマホを胸ポケットにしまいながらため息をつく高橋に謝ると、腕を掴まれてぐいっと引かれた。