シークレットな関係
「うわあ、ホントになにもない!」
晩御飯は私が作ると宣言し、とりあえずキッチンにお邪魔して冷蔵庫の中を確認したのだけど、唖然とする。
野菜室は空っぽで冷蔵室にビールが六本とサラミとチーズとペットボトルの天然水があるだけだ。
部屋と同じく、なんて殺風景なんだろう。
卵もないなんて、本当に自炊しないのだ。
でも、冷蔵庫だけはファミリーサイズで無駄にデカイ。
「だから、何もないと言っただろーが」
「わかった。じゃあ、買いに行こう!スーパー近くにあるでしょ」
「行ってもいいが、櫻井は変装しなくていいのか。普段ならともかく、俺と二人でスーパーだとマズイだろ」
「大丈夫。誰も私に気が付かないもの」
電車に乗ってもコンビニにいても、誰にも声を掛けられたことがない。
会社でも気付かれないし、すっかり忘れられた人になった。
「だから、今がんばってるんだもの。もう一度、世に出られるように。気づいてもらえるように」
「そうだったな。じゃ行くか」
近所のスーパーには買い物客がいっぱいいて、広めの駐車場も満杯に近かった。
家族やカップルの姿が目立つ。
ほかの人から見たら私たちもカップルに見えるんだろうな。
「ねえ、高橋は何が食べたい?」
「・・・茶碗蒸し。あと、ふろふき大根」
「思いっきり和食だね・・・」